31日

大晦日。

更にいつもに増してバタバタと師走な毎日でした。

なんだかなぁ。という気持ちでいた時に、あるピアニストにその答えを頂きました。

その方は私が高校生の頃によくリサイタルや世界的なバイオリニスト、チェリストとジョイントリサイタルをされており、何度も観に行った思い出のピアニスト。

この度有難いご縁により共演の機会を頂き、共にレッスンに通っておりました。

ステージの上にいた方と、ステージの下から観ていた私です。

 

そんなレッスンの帰り道、演奏活動50周年を今年迎えられたその方が仰ったことが響きました。

「あまり詰めすぎると良くないわよね。味わえなくなるから。味わえないのはヤよね。同じ苦しむなら味わえないとね。」と。

 

その方の演奏活動は常に盛んで、大忙しのイメージでしたが(本当に毎年ヨーロッパからフロントソリストを呼んで共演を続けてらっしゃったのだ)この言葉はグッときました。


本番は25日「演奏家のたまごコンサート」でした。
恩師、本多令子先生に「ゲスト演奏家として出て欲しい」とお声掛け頂いた時の私の驚きと感激がお分かりになりますでしょうか。
私は所謂「クラシック」のバイオリニストとしては邪道とも言えるノージャンルの好き勝手弾いて生きている音楽家(こういうと良くない感じですが)なので、「先生」という方々の前では恐縮してしまいがちです。
「真面目でない」と思われるのではないか…。奏法まで好き勝手になってるんじゃなかろうか…。etc
勝手にいろんな事を想像していました。
そんな私に、私の演奏を知った上でこのようなお声を下さった事が本当に嬉しかった。
私に数え切れないことを教えてくださった先生のレッスンにまた通う日が来るなんて。それも憧れのピアニストと一緒に!

とまぁ、迎えた本番。
「たまご」たちの素晴らしい演奏と、京芸の現役後輩のしっかりとしたソナタを堪能して、私の私らしいヴァイオリンを演奏しました。
大学時代に習った作曲家の和泉先生がお運び下さっており、久々にお話をお伺いし(恥ずかしながら私も作曲を始めた事もお伝えして)なんだか温かな気持ちでその日を終えました。

その後も小学生の頃から教わった杉山笙子先生のユングゾリステンに助っ人で出させて頂けたり、年末ギリギリまで演奏させていただきました。


さて、2018年は皆さんにとってどんな年でしたか?
私は今年の漢字「災」にその通り、振り回されてしまったという印象の一年でした。
いい事もたくさんあり、健康に新年を迎えられる事に幸福を感じておりますが、心の中に「失ったもの」が残っています。
こんな風に年の瀬を過ごすのは初めてです。(いつも能天気にへらへらしてきた事が露呈されるな…)
来年は、明るい年だった!で終われるよう願います。

 

それでも元気に今年の一月一枚。

年初めにオトカリテを卒業し、二月には誕生日にコンサートを。ジャズストリートには今年も出演させて頂き、厳しい夏にコンサートシリーズが始まりました。大学時代の恩師の定年記念コンサート、青山剛昌先生ふるさと館。

コンサートシリーズが4枚あったために、他に目を向け辛いですが、今年も大変盛りだくさんな一年だったと振り返る事ができました。

ありがとうございます。

 

来年にさらなる期待をして。

それでは皆様、良いお年を。

8日

コンサートシリーズ2018が幕を閉じました。

7月21日に始まったソロコンサート。

12月8日までに4回、3箇所の会場で開催させて頂きました。
2018年の下半期は常にこのコンサートのことを考えて生きていたと振り返ることができます。
地震、台風、猛暑、豪雨…。
なんだか心の落ち着かない7、9月に始まり、やっと心静かに音楽だけを考えられると思ったら「終わってしまった」というほどに駆け足でした。
全69もの曲数。グランドフィナーレでは総集編な部分もあったので同じものを省くと49曲。(メドレー含め出したらとんでもない数になるのでやめておきます)
お付き合い頂いたお客様に心から感謝しております。

 

フィナーレでは、大好きな作曲家フランシス=レイを取り上げました。

今年はなるべくアレンジも自分でと思って、頼ることなく(正確には少なく!)練ってきました。

第三章が終わり、ようやくアレンジに手をつけ出した頃、フランシス=レイの訃報をニュースで目にしました。

まさに譜面を書いている時の出来事で、何の導きなのかしら不思議な気持ちになり、急遽作品数を増やしました。

「ある愛の詩」には心を込めて即興でカデンツァを入れました。彼への敬愛と尊敬の念を込めに込めて練りこんで。(表現が怖いな。けどほんと。)

どうしたらこんな曲が書けるのだろう。

どんな人生を送っていたのだろう。

一度でいいから会ってみたかった。

いろんな思いが巡りました。

でも音楽とはすごいもので、いつでも曲を弾けば近くに感じることができるのです。だから音楽は素晴らしい。そんな気持ちにもなる彼の作品でした。

 

そして、今回はなんと全編ノンストップ休憩なしでお聴きいただいたのが、ザ・「グランドフィナーレ」的な部分。

お客様にもお疲れ様でした。(これストーリーの後半でも言ってなかった?)

本当にありがとうございました。

 

これまでに自主開催したコンサートは数えたことがないけれど、たぶん主催の数が相当多い演奏家なのでは?と感じています。

いつも、企画が始まると一心不乱に向かい、終わると燃え尽き、反省、そして襲いかかる喪失感。

一生満足感を得られないのは演奏家の性なのでしょうか。

けれどコンサートシリーズは一回一回のコンサートでは終わらないという喜びがありました。

ひとつ、またひとつと、どんどん気持ちは高揚し次回への期待感に包まれる。(だからこそ、最終章が終わるのが怖かったのが本当のところ。)

「次が楽しみになった」とお声を頂く度に「私も!」と思っていました。

 

こうして一緒に楽しんでくださる皆様のおかげで最後まで走りきる事ができました。

シリーズは最後なのに「来年もやるよね?」「これからもずっと期待してるよー」「次は2月3日だよね?」なんて、次のコンサートを期待するお声をかけてくださる皆さんに、胸がジーンと熱くなりました。

 

来年はどんな年になるのだろう。

皆さんとまたコンサートでお顔を合わせて過ごせますよう、毎日を大切に生きられたらそれが一番の願いだなと思っています。

 

今年の松本尚子コンサートシリーズ。

心から、ありがとうございました。

Thank you for everything.